大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 昭和33年(家)6135号 審判 1958年5月23日

申立人 伏見よし江(仮名)

相手方 長岡修二(仮名)

主文

一、相手方は当事者間の子二人の扶養料として即金五千円及び昭和三十三年六月分以降毎月末日限り一ヶ月金三千円宛を分担し申立人に対して支払うこと。

二、爾余の子の養育に関する費用その他の扶養義務は申立人が分担すること。

三、前記子の監護教育について特別の費用を必要とするときには別に定めることができることとする。

四、審判調停費用は各自弁とする。

理由

一、申立人と相手方は昭和三十二年○月○○日当事者間の長男裕一(昭和二十六年○月生現在小学一年生)、長女圭子(昭和二十七年○月生)の親権者を何れも申立人と定めて協議離婚をした。

二、申立人は相手方との結婚生活中の度重なる掻破手術により著しく健康を害し、従つて離婚後まだ職業に就いていない。目下のところ相手方との間の前記子二人と共に、申立人の実母、及び実弟の世話になり、生活保護法による生活扶助金月五千余円乃至六千余円によつて生活を維持しているものであるが、昭和三十三年五月火災にあい、その居住家屋の八分通を焼失したような状況である。

三、相手方は計理士の資格はないが、これに類似した仕事に従事しているものであり、先々妻達の子二人(昌子十八歳、秀一十二歳)と共に起居し、その月収は本人の自認するところによれば二万九千円程度とのことであるが、相手方の申立による諸般の事情より推算すれば、尠くとも一ヶ月金四万乃至五万円位の収入はあると判断される。

四、相手方の資産としては、○区○○町に宅地三〇坪余とその地上家屋九坪の外、○区○○に貸本屋の店舗(賃借家屋)があるが、申立人は子の養育費の外に相手方に対して離婚に伴う財産分与請求の申立を為し、右審判において相当額の財産分与がなされることが期待される。尚子の扶養について当事者間の話合により暫定的に本件審判迄一ヶ月三千円宛を相手方は分担支払うことになり、昭和三十二年十二月分より昭和三十三年三月分迄、その支払が為されたものである。

五、右のような相手方の資産収入の点から判定すれば、前記子二名の扶養については専ら申立人と相手方の両者において全責任を負担すべきであり、公的扶養(生活保護)を求めるなどは不当であるが、現実において相手方がその子の扶養について申立人の処置に放任して、自己の扶養義務を十分に履行しない現在、直ちに公的扶養を打切ることができないとすれば、一方これら扶養能力ありながら扶養義務を負担しない者に対して公的制裁(遺棄罪の拡張、民事拘留制度)の途を設けることは、他の一般善良な納税国民に対する関係においても緊要のことと思料するところである。しかしこれらの義務履行の強制制度のない以上、任意又は強制執行によつて履行確保を得られるか否かは別として、一応ただ審判手続にて扶養料額等を確定する外はない。

六、叙上の事情から扶養の在り方を検討するに相手方の前記資産収入の程度、並に申立人が相手方より別途に相当額の財産分与をうけ得られる事実(当庁昭和三十三年(家)第六一三四号審判事件)、従つてこれを以つて自己並に前記子二名の生活費に充て、一面申立人自身も早急に職に就いて若干の収入を得べき責任のあること等を勘案すれば、当事者間の子に対する扶養権利義務関係としては、とりあえず主文のように定め、後日事情の変更のあるときには、その事情に応じて改訂せしめるを相当として主文の通り審判する。

(家事審判官 村崎満)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例